旅立ちの森

働くとは何か

スクールタウンでの学びを終え、20歳になったユウタたちは
新たな冒険の地「スタートタウン」へ足を踏み出した。

ここは“働くこと”を通じて生きていく街。
胸を張って進みながらも、ユウタの中には
「ちゃんとやっていけるかな?」

そんな小さな不安が芽生えていた。

ブラック企業を見抜く力

スタートタウンの駅を降りると、朝の空気がぴんと張っていた。
スーツ姿の人たちが小走りで会社へ向かい、「おはようございます!」の声があちこちで響く。

ユウタは緊張と期待で胸が熱くなる。

ユウタ
ユウタ
いよいよ社会人か…!
バイトもやってたし、なんとかなるよな!

ユウタは胸の奥に、少しの不安と大きな期待を抱いて採用された会社に入って行った。

初めてもらった名刺。ピカピカのデスク。
すべてが新鮮で、ワクワクしていた。

最初の数日は先輩が丁寧に教えてくれた。
電話が鳴るたびに心臓が跳ね、コピー機の前であたふたして。
それでも、「少しずつ慣れていけばいい」と思えていた。

――けれど、2週間が過ぎた頃。

いつの間にか昼休みは一瞬で終わり
夕方にはデスクの上に仕事が積み上がる。

周囲を見ると誰も席を立たない。
時計は22時をすぎ、外は雨で暗い。

ユウタ
ユウタ
みんなまだ帰らない…。
“新人は帰るな”って言ってたし…

冷めたコーヒー。無表情の人たち。
白い蛍光灯の光だけが、静まり返ったオフィスを照らしていた。

そのとき、ふわりと光が舞い、うさ耳の魔導士アンが現れた。

アン
アン
ユウタ、顔が真っ青よ。
ここは、働くというより“削られてる”場所ね。
ユウタ
ユウタ
でも……がんばらないと。みんな我慢してるし。
アン
アン
がんばることと、壊れることは違うわ。
あなたの心が“助けて”って言ってるときは、立ち止まっていいの。

📝 解説

~ブラック企業を見抜く力~

スタートタウンは“働く力”を育てる場所。
だけど同時に、あなたの心をすり減らすような会社もある。
その違いを見抜くことは、働き方の「防御魔法」なんだ。

私も、昔は“働く=がんばること”だと思っていた。
どんなに眠くても、どんなに心がすり減っても、
“ここで逃げたら負けだ”って言い聞かせてた。

夜のビルの明かりの中で、同僚と窓の外を見ながら
“ここから飛び降りたら楽になるのかな”なんて、
冗談みたいに笑ってた。
でも本当は、笑うしかなかったんだと思う。

あの頃の私は、壊れる寸前だった。
“がんばる”と“自分を失う”の区別がつかなくなってた。

でもね、逃げた先にちゃんと光があった。
勇気を出して職場を離れて、しばらく休んで、
少しずつ、自分の心を取り戻した。
そして今は、こうして笑って、
自分のペースで生きてる。幸せだなって思える。

だからもし、今あなたが苦しい場所にいるなら、
どうか無理をしないで。
仕事は生きるための手段であって、
あなたの命より大事なものじゃない。

やめてもいい。
立ち止まってもいい。
そして、誰かに相談して。
話すだけで、救われる夜がある。

働くことは、生きることとつながってる。
だからこそ、“自分を守ること”も立派な仕事なの。

ブラック企業を見抜く3つの魔法

① 空気が重たい職場は、心をすり減らすサイン
→ 入った瞬間に“なんか息がつまる”と感じたら、それはあなたの心が反応してる。

笑顔がない、挨拶が返ってこない、誰も目を合わせない
――そういう職場は危険信号。
人の心を置き去りにする場所では、長くは輝けないの。


② 「根性」や「やる気」でごまかす会社は注意
→ “やる気があればできる”“努力が足りない”を繰り返す会社は
仕組みやサポートではなく“我慢”で回していることが多い。

それは成長じゃなく、消耗。
頑張りを前提にした職場に、優しさは育たないわ。


③ 話を聞いてくれる人がいない会社は、危険
→ 上司や先輩に相談しても、「それは自分で何とかして」ばかり。
そんなときは、“組織の耳”が閉じてるサイン。

どんな職場でも、話を聞いてくれる人がいること――
それが安心して働けるいちばんの条件よ。

アン
アン
仕事は大切だけど、それよりも大切なのはあなた自身。
相談する勇気も大切よ。
何かあったらアンに相談してね。