旅立ちの森

サブスク妖精の誘惑

デビットフォレストの奥深く。木々の葉がざわざわと鳴り、どこからか風が巻き起こる。

ユウタ
ユウタ
うわっ、霧がすごい!
どっちに行けばいいんだ!?
ミサキ
ミサキ
待って、みんなはぐれないように――!

しかしその声も届かず、白い霧が一気に立ち込める。視界が真っ白になり、足元すら見えない。

サトシ
サトシ
ミサキ!? ユウタ!? アン!? ……どこだよ!

返事はない。聞こえるのは木々がきしむ音と、自分の足音だけ。

霧の中でサトシはあてもなく歩き続ける。

サトシ
サトシ
はぐれちゃった。なんでこうなるんだよ。
せっかく全員で抜け出そうとしてたのに……

と、そのとき――
♬ふわり…… と、どこからか心地よいメロディが聞こえてきた。
やさしく包み込むような、甘い音。

サトシ
サトシ
……ん? 音楽?

疲れた身体に、音がすっと染みこんでいく。

サトシ
サトシ
……なんか、懐かしいような……癒される……

ふらり、ふらりと足が勝手に動き出す。霧が薄れ、泉のほとりが見えてくる。
泉の中央で、光の粒が集まりだした――
光の中心に、小さな泉が見える。水面がきらきらと輝き、その上に妖精が浮かんでいる。

サブスク妖精が現れた

サブスク妖精
サブスク妖精
ようこそ、旅の人。疲れたでしょう?
ここで少し休んでいかない?
サブスク妖精
サブスク妖精
ここでは、どんな願いも叶うの。
映画も音楽も、本も、ぜんぶ楽しみ放題よ。
しかも、最初の1ヶ月は“無料”なの。
サトシ
サトシ
無料!? マジで? やった……
こんな森の中で、ラッキーじゃん!

サブスク妖精は微笑みながらサトシに近づいてきた。

サブスク妖精
サブスク妖精
そう……“登録するだけ”でいいの。
あなたの時間を少し、貸してくれれば……
サトシ
サトシ
時間? まあ、暇だし、いいか。
どうせみんな見つからないし……
サブスク妖精
サブスク妖精
ふふ……
さあ、あなたの心を“自動更新”してあげる……

その瞬間、杖の光がまぶしく弾けた。

アン
アン
サトシッ! そこから離れなさい!

光が霧を切り裂くように走る。サブスク妖精が悲鳴を上げ、泉の水しぶきが飛び散った。

サトシ
サトシ
うわっ! アン!? な、なんだよこれ……!?
アン
アン
サブスク妖精よ。あれは“無料”を装って、旅人の時間を吸い取る悪魔の化身なの!
サトシ
サトシ
時、時間を!? オレ、もうすでに……?
アン
アン
大丈夫、まだ間に合うわ。でも次からは気をつけて。
“お試し”の裏には、“自動更新”の呪文が隠されてるのよ。

サブスク妖精は消えかけながら、まだ話しかけてくる。

サブスク妖精
サブスク妖精
ふふ……どうせまた戻ってくるわ……
“無料”の扉は、いつでも開いてるの……

サブスク妖精の声が霧の中に消える。
泉は静かになり、再び森の風が吹き抜け、サトシの周りの霧が晴れた。

サトシ
サトシ
……怖っ。
無料って、怖ぇな……
アン
アン
そうね。でも正しく使えば、彼女たちも味方になってくれるわ。
“自分が使う価値があるかどうか”を見極めること――それが、サトシの次のクエストよ。

📝 解説

サブスク妖精は、けっして“悪”じゃないの。
音楽を聴いたり、映画を観たり、学びのサービスを使ったり――
上手に使えば、あなたの毎日を豊かにしてくれる、優しい存在。

でもね、サトシのように「なんとなく登録したまま」になっていると、
気づかないうちに、魔法の“自動更新”があなたの時間とお金を吸い取っていくの。

「最初は無料だから」「そのうち使うかも」――
そんな気持ちで放置したサブスクは、
まるで静かに口を開けた沼のように、毎月少しずつ資金を飲み込む。

だからこそ大切なのは、“見直しの魔法”よ。
毎月いちど、あなたの契約リストをチェックしてみて。

📋 見直しの3ステップ
1️⃣ 「実際に使っているか」を確認
2️⃣ 「心が満たされているか」を感じてみる
3️⃣ 「不要なら今すぐ解約ボタン」

使っていないものを減らすと、
心の中にも“空き容量”が生まれるの。
その空いたスペースに、ほんとうに大切なものを入れてあげて。

サブスクは、あなたの味方にも、敵にもなる。
選ぶのは――あなた自身よ。